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今はすごく、居心地がいい。
誰も触らず置いておいてくれるから。
皓、と呼ばれた。
私は窓際に乗せていた両方の腕から顔を上げて、声のほうを振り返る。
いかない、と首をふった。
尻尾があったなら、長く伸びたそれで床をぱたりと叩いただろう。
賑やかなのは好きだけど、私の居場所はその賑やかさの中心じゃなかったし。
できれば窓枠の、少しはなれた場所で見ているのが一番お似合いだった。
……多分。
秋の日差しが長く降り注ぐ窓際で、ぼんやり空を見ている。
黄昏時が一番、不安で自由だ。
帰らなきゃいけない気持ちと、どこにも帰らないでいい気持ちが混ざり合う。
黄昏前に家に帰らなければ、そのまま夜を歩く。目的も決めずに、どこまでもふらふらとさまよう。
そういう時、傍らには誰も必要ではないし、自分の足取りさえ確かなら本当にどこまでも……すごい場所までいってしまって愕然としたことさえあるから。
(そういうの、迷惑じゃない人じゃなきゃダメ)
なんとなく思った。
今は誰もそばにいない。背中のほうでは笑い声。
中に混じるべきかなと思ったけど、今はそんな気分じゃなかった。いまさら入るのは気が引けたし…私がいなくても平気な場を見てると安心した。
(人一人、いなくなって壊れる世界なんて、そんなの不毛)
私がいなくても、壊れず回る世界がいい。
私は、できればその中で……必要とされあう人たちの記憶の中、一条の軌跡だけ残して消えてくのがいい。
辿りきれずに見失う流れ星みたいな。
(私を必要としないで)
好意も愛情も信じないで。純愛とか、親愛に騙されないで。
(そんなの、所詮気まぐれだ)
どうでもいい、と思う。
―――泣きそうな気分で。
* * *
『 人たちの群れは 朝の街に 駅に 変わらぬ景色を写すのでしょう
いつか私が消えたあとにも 』
「皓ちゃん」
顔を上げる。そばに行かなくてはいけない声が呼んだ。
振り向かなくてもわかるぐらいだから、私は素直に起き上がって、声の持ち主のそばに行く。
白くて長い尻尾がほしいな、と思った。
魔弾術士になれれば、手に入れられるのだろうか?でも、かえられない気がした。この道からは。
膝に座ろうかどうか迷った。考えて背中からのしかかった。
いつまで、どれだけこうしてられるだろう?
未来に興味はあまりないけれど、漠然とそう思った。
できればこの人が寂しくないほうがいいなぁと思った。猫は猫なりに、そう思った。
―――そして、そのまま頭の上でくしゃみをして怒られた。
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