シルバーレイン内に生息する月篠皓とかいう人の日記。
わかんない人は、帰るといいと思う
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空には月。雲ひとつない夜の空。
肌に感じる風。足の下の砂利の感触。
誰もいない森の泉で、独り月を見上げる夢を見た。
手を延ばし、月に触れようとして。指先から涙のように雫が落ちた。
ただ、このまま水の中に。
何もかも溶けて消えてなくなればいいと泣いた夢を見た。
……大嫌い
神様の声が聞こえなくなったあたりの私は猫の足音で夜を歩く。
その頃世界の中心は、間違いなく身近にあった気がした。
雨が降って、髪も服も全部濡らした。
傘を持つなんて弱虫のすることって思うような気分だった。塗れて色鮮やかになる花に憧れたのかもしれなかったし、体に付着した色々なもの。体をゆすって飛ばす猫のようにしたかったのかもしれなかった。
夢の出来事のように、世界はやさしい湿度には満たされていなかったし。私の周囲は当然のように埃っぽくてビルの谷間は猥雑だった。
それでも、と思って。
私はいつでも「それでも世界は綺麗」と唱えて、無意味な意地を張って夜を歩いた。
ちっぽけな存在だなんてわかっていたけど、それでも胸を張って歩きたかった。
ここにいるよ、なんて声を上げることがみっともないことだって知ってた。抱きしめて欲しいよ、なんて歌を鼻で笑って夜の街を走り抜けた。
理由もなしで、小さなナイフ一本で。身にかかる全てを切り裂けるみたいに愉快だった。
だから、濡れたまま。足元に広がる汚い水溜りに座り込んで。
雨は変わらず降り注いでいたし、それでも街の明かりは消えなかったから。私がここで倒れて死んでも変わらない世界に安心した。
全部が愛しいと、狂ったままの気持ちで思った。
(月を抱きしめるより、街を…世界を抱きしめたい)
だから生きるし、ゴーストだって退治するよ。
稚拙な理由を求めたのは、少し弱っているのかもしれなかった。色々なことに。
そのせいで、差しかけられた傘に気がつくのにもずいぶん時間がかかった。
「よく迷子になる子だねぇ」
どんな意味で、それを言ったのかなんて知らない。
けれど見上げた顔は知りすぎるほど知った顔だった。
「…迷子になった猫を探す時は、張り紙を刷るんじゃないの?普通」
「普通なんて知らないよ。僕は自分のしたいようにするのさ」
轟然と言い放った彼は、見下ろすばかりで手は差し伸べない。私もそれを求めてなかったし、きっと差し出されていたらその手に爪を立てて逃げ出してただろうと思った。
「答えは出たかい?」
行って彼は腰をかがめ、ただひとつの傘を自分の猫…私にかぶせた。
「…ぬれるよ」
「たまにぬれるのも風流だよ。…楽しむ気持ちさえあればね」
ぽん、と頭をひと撫でして背を向ける。
「早くおうちに帰りたまえ。…ご両親が心配なさってる」
さりげなく言って、そのまま街の滲む光に歩いていってしまう。…私は。
「…もうずぶぬれなのに…」
傘持っていたら、濡れた言い訳できないじゃん!とその背中に向かって言い返した。
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プロフィール
HN:
月篠皓
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1990/12/12
自己紹介:
このブログ中に用いられているイラスト作品は、株式会社トミーウォーカーの運営する『シルバーレイン』の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
イラストの使用権は作品を発注したプレイヤーに、著作権は各イラストマスター様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します
ちなみに、メセアドはgimmick_flower@hotmail.co.jp
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ちなみに、メセアドはgimmick_flower@hotmail.co.jp
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