[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
『 パンの耳をかじる 私の耳をかじる
悪い王様 お食事はこちら 』
木の上で遊び疲れた猫は、主の膝に当然のように座る。
今日の出来事、うれしそうに語ってみせる。
彼はけして、不自由ではないけれど……遠い空を見通せる千里眼は持っていないから。
彼女の目に映る世界の話を、時折懐かしそうに聞くことがある。
「あの人も、王様なんだね」
「そうかい?彼は王様というより百獣の王じゃないかい?」
「うん、そんな感じ。でも王様。みんなの」
「そうだね。彼はそうだね」
とても穏やかに微笑まれたから、彼女は自分の王様を見上げて言葉をつないだ。
「うん。優しくて強い王様。みんなはきっと喜ぶね」
「そうだね。あの場所は…あそこは彼の王国だよ」
それは誇らしく。でもなぜか遠いものに憧がれる様な響き。
猫は首をかしげる。
「私は、貴方の猫だよ」
すんなりとそんなことを口にして。存在しない尻尾の代わりに、自由な足をばたつかせる。
常とは違う微笑み方を彼はして
「わかってるよ」
なぜか、儚いものを見る眼差しで彼女の髪を撫でた。
ソファの左端は、彼の定位置。
闇色の髪に、猫がじゃれる。彼の背中にのしかかる。
重いよ、と笑われても気にしない。やがて彼もいつものことと読書に戻る。
足をばたつかせる感触と、気まぐれに響く猫の歌声。
彼は本を置き、自分の傍らに彼女を招く。手招きに、軽やかな足取りでソファをまわって、当然のように横座りに膝に座った。尻尾のかわりにばたばたと足を揺らす。
膝にいても何をするわけでもない。
ただ猫は猫らしく、膝に座るだけで満足する。彼が今まで読んでいた本を拾い上げ、気まぐれな仕草でぱらぱらとめくる。
「いい子だね」
彼はのんびりと水色の髪を撫でて、唇を寄せた。
それすら当然として、彼女は反応しない。王様の好きなようにさせている。
長く繊細な形の指先が、悪戯の様に柔らかく髪を引っ張った。
「何?」
「なんでもないよ」
猫の金色の瞳を覗き込み、微笑んで彼は言う。ふうん?と呟いて、猫は再び一人遊びのように本のページをめくる。
しばらく、そんな……誰にも邪魔されない、穏やかな時が流れた。
* * *
「にぁ!?」
突然足を組み替えられ、バランスを崩した皓がソファの下に消えた。
「何するかなぁ!?」
すっかりと猫気分で油断していたせいか、見事に転がり落ちて腰を打つ。おやおや、と久は笑顔でそれを見下ろす。
「大丈夫かね?」
「腰うった……」
いまだストンと細い腰を抑えたまま、久の足元で皓が大げさに唸る。やれやれと芝居がかった溜息で久が肩をすくめた。
「もっと身軽に落ちたまえ」
猫だろう?
にっこり、と隙のない笑顔で久が言い放つ。
「突然足なんか組みかえるからじゃん!!ひとこと言おうよ!」
がぅと咬みつく勢いで皓が叫んだ。大人しくしていたぶん、無駄に元気があまっているらしい。とりあえずすぐに食ってかかれるあたり、それほど重大な被害はないらしいと、彼は内心で冷静に判断する。
ぴしり、と指を一本立てて彼はにゃぁにゃぁ鳴く猫を黙らせた。
「…今日は泊まっていくのかね?」
勢いをそがれた形で、皓は数回瞬きをする。
そして、うんと素直に頷いた
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
イラストの使用権は作品を発注したプレイヤーに、著作権は各イラストマスター様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します
ちなみに、メセアドはgimmick_flower@hotmail.co.jp