2006/09/20 (Wed) 王様と猫 ～act2 猫の事情 ～

　真っ白い朝は嫌いじゃないと思う。

　寝起きはいつもいい。たいていの場合、起こしにくる母親の足音で目が覚める。
　「起きてるよぅ～」
　扉の前でノックしようとして止まった母親に先うちで声をかけて、ベッドから起き上がる。
　うーん、と伸びをしてから顔をしかめた。
　溜息をついて両手の平を開く。…わずかに赤く、火傷のように熱を持っていた。
　（…使わなければよかったかなぁ…）
　昨夜、少しだけ『張り切りすぎた』ことを後悔する。
　（……でも、上手になってきた気もする）
　最近できるようになった「ヒッサツワザ」のことだ。…使うと面白いように相手が斬れるが…同時に自分も炎で怪我をするのが難点。
　でも、ヒッサツワザなんてそんなものだと皓は思う。
　握って、開く。
　多少の痛みはあるが、日常に支障があるほどではない。鞄も持てるし、鉛筆も握れる。
　なら、問題はなかった。
　「朝ごはん、冷めちゃうわよー」
　「今いくー」
　強く手を握って、もう一度だけ伸びをした。
　日常に戻らなければいけない。朝の光が白く差し込む間は、自分は普通の女の子なのだから。
　―――どれだけ、闇を走るのが楽しくても。
　それは異常なことだと、彼女は正しく理解をしていたし。同時に走り出したものはもう止まりはしないのだと、わかっていた。
　とてもよく、わかっていたのだ。