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……血…。
嬌声。
匂い。
ああ、ああ。
全部が嫌いだ。
…久しぶりの戦争。しかも雪女になって初めての戦争。
手に嵌めた秘色綴の感触。
傍らには久がいて。ああ、大丈夫だと、無条件の安堵感なんかがあったりしたから。
忘れてた、魔剣士の時とは勝手が違うのだということに。
がつ、という鈍い音を聞いた気がした。
そして意識が暗転。
……マンガみたいで間抜けだ、とか頭の片隅で思ってた。
すごく、理不尽な気持ちで。
気がついたら戦争が終わってた。
空気の匂いが違う。森の、土の。木の香り。
特にナチュラリストなつもりはないから、そんなものを胸いっぱいに吸い込む気にもなれなかったけれど。
……体を起こす。手近な樹に背中をあずけた感じで寝かされていた。
最後に感じた痛みの場所に手を添えて、顔をしかめた。……たんこぶになってるし。
それでも、さほど周囲の仲間たちに悲壮感はなかったから。きっと、敗北よりはマシな結果だったんだろうと思って……結社の仲間を探す。
……変な、不安があった。
久は?
最後も一緒の戦場だったのだし、逃げてきたなら同じ場所にいるはずで。
ましてや、私が………情けないことだけど、倒れていたなら傍らにいないはずがない。
どこにいる?
舌打ちしながら、人ごみを掻き分ける。利賀之団長を探せばいい、でかいからすぐに見つかる。
……それはそれでとても悔しいことではあるのだけど。
掻き分けて、押しのけて見つけた。でかい赤いヒト。
むやみにでかくて目立つから、どんな顔してるかがすぐわかって背中に蹴りを入れようかと思ってやめた。
あまりに、背中が大きいからやめた。
守り通す背中と力があるから。覚悟があるから、私の蹴りぐらいじゃびくともしなくてやめた!
見れば傍らに久我っちもいたから、私はそっちに聞く。
「久は?」
思った以上に声がかすれてイライラした。
私を見下ろして、久我っちはけっこう冷たい瞳をした。容赦がなかった。責めてはいないけれど、凍えていた。
「……深伽先輩なら、救護所。重傷だから」
…応え聞いて、走り出すのなんてみっともなくてすごく嫌いだったし。それをだんちょとかが見てるのだって、すごくなんか悔しかったけど、でもやっぱり走って。にわか作りに設営された白い布を捲り上げて中に入って、探し出す。
予想以上にたくさんの重傷者がいて。あけたとたんに血の匂いがした。嫌いだ。
大嫌いだ。
血の匂いは、あの嬌宴を思い出す。リリスたちの、狂った。穢れた。あの血塗れの手を思い出す。それに引きずりこまれた人間たちを思い出す。
人間たちの本能に付随する狂喜を思い出す。
―――私に 触るな。
血の一片だって、私につけるな。気持ち悪い気持ち悪いキモチワルイ!!!
「皓?」
……血の匂いに慄いて立ち尽くしていたのが丸わかりだった。
奥の方で上体を起こしてこっちを見ている久には、きっと。
「……あ…ごめん、なさい」
邪魔そうに横をすり抜けたメディックの誰かに謝って、傍に進む。血の、匂いがする。
「……大丈夫?」
「最後の最後で、失敗しちゃったねぇ」
少しの間安静だよ、と彼は微笑んだ。
「………ごめん」
一緒にいたのに。
心のどこかで、盾になれるとか、思っていて。
「傷は、すぐに癒えるさ」
いつか聞いた言葉を、もう一度繰り返した彼を見上げる。その傷と、血。
立ち上がる。
「ごめん、またあとで来る」
走り出す。
怖いとか、依存とか。そんなもの。
そんなもので、一体何が手に入るというのか。
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