2008/11/05 (Wed) 凍えたような唇で

　……季節が冬に近づいて、やっと雪女になった実感がでてくる。

　寒くない、というのとはちょっとちがう。寒さが。温度が。
　本来温かいはずの体から失われていく感覚。

　指の先から、凍えていく。
　なのに、痛みがない。恐ろしさがない。…体が、冷たくなってゆくのに。

　
　……ああ、名実共に化生になったんだな、と気がつく瞬間。



　

　冬の夜。誰も踏み入らないような山の中に行きたい。

　きこえるのは、風の音だけで。
　後の音は全て雪が吸い込んでしまう。

　温度を失った体に、雪はどんな感触なのだろうか。
　手で触れても解けることがないなら、きっとそれはとても美しく見えるだろう。
　その上で眠るのは？

　鉛色の空。星も月もない。
　けれど明るいのは雪があるからだ。降り積む雪があるからだ。

　………その中で、凍えないというのはどういうことなのか。
　そのなかで、街の灯りを望むのがどういうものなのか。

　少し、知りたい。